病気の解説@「高齢者の骨折について」
@高齢者の骨折  A生活習慣病
高齢者の骨折は転倒によるものが多く、また骨粗しょう症があると骨折を起こす確率は高くなります。年齢が進むと誰でもしだいに骨の量が、減ってきます。この骨の減りかたが著しいと、腰や背中に痛みが起きたり、腰が曲がってしまったり、骨折が起きやすくなります。
高齢者に多く起こるので、骨の単なる老化現象であると思われがちですが、ただの老化現象ではなく、その上にさまざまな原因が加わって起こる病的な状態これが骨祖しょう症という病気です。

骨粗しょう症の診断方法としては次のようなものがあります。

★骨塩定量測定

両手のレントゲンを撮るだけで、出来る検査です。
手の骨の密度を測ることで、全身の骨の状態を推定します。

★骨吸収マーカーの測定(NTx)

尿を少量採るか、少量の採血で、検査することが出来ます。
骨は一度作られたら一生変化しないように見えますが、破骨細胞が古い骨を壊し(骨吸収)、骨芽細胞が新しい骨を作る(骨形成)という代謝をくりかえして新しい骨に生まれ変わっています。
骨吸収と骨形成のバランスがうまく保たれていると骨量は維持されます。閉経などの要因により骨吸収が優勢になり、亢進すると骨形成が追いつかなくなり骨量は減少します。
気になる方は来院されて、主治医と相談し、検査を受けてみたらいいと思います。

転倒によって骨折しやすい部位は、


@脊椎圧迫骨折(背骨)      
A大腿部頚部骨折(大腿骨の付け根)
B橈骨遠位端骨折(手首)     
C上腕骨上端部骨折(腕の付け根) 
D肋骨骨折 
           
ですが、特に@Aの骨折は高齢者にとっては寝たきりになる恐れがあり、大変注意が必要になります。

骨折を予防するうえでもっとも大事なことは、
転倒しないように注意することです。それは、安全な履物を選ぶようにし、雨の日や雪の日の外出は避けるようにしましょう。
また、家の中では段差を少なくするようにし、階段や廊下には手すりなどを付けるような工夫をしてみたらいいと思います。

その他に骨折を予防するには、日常生活においてバランスのとれた食事を摂るようにし、特にカルシウム(小魚、牛乳など)、たんぱく質(大豆、魚、肉、乳製品など)、ビタミンD(レバー、バター、青魚、きのこなど)、ビタミンK(緑黄色野菜、海藻、納豆など)を十分摂るようにしましょう。

また、日光浴をするようにしましょう。日光浴は紫外線によりビタミンDを活性化させ、カルシウムの吸収をよくします。ビタミンKは骨の形成を高める働きがあります。それともう一つ、適度な運動をすることにより筋肉を鍛え、筋肉を使うことで骨を強くしていきましょう。

例えばウオーキングでは、毎日30分〜1時間を目安に毎日行うようにし、また筋肉の痛みを残さないように毎日入浴しましょう。その他、腹筋や背筋を鍛えるための運動をするに当たっては、主治医の指示に従って行うようにしましょう。(筋肉は使わないと一日に5%の速度で力を失っていきます。)

もし骨折により臥床安静が必要なときは、寝たきりのまま生活していくことにより、低活動や体動の不必要によって身体能力が低下してしまう廃用性症候群に気をつける必要があります。

廃用性症候群の代表的なものでは、関節拘縮、筋肉の萎縮と筋力の低下、起立性低血圧、心肺機能低下、褥瘡、自律神経障害、骨粗しょう症、尿路感染症などがあります。

これらは、本人や介助者により予防することができます。ベッド上でも適度な運動ができるような環境を整え、寝たきりや寝かせきりにするのではなく日中はできるだけ横にならないようにしましょう。自分でできることは自分でするようにし、体力低下の予防に努めましょう。
また体力のない高齢者の方は起きて座っているだけでも体力低下を防ぐことができます。
そういったことを繰り返し、体力が上がってきたら簡単な運動から始めていくようにして体力低下を防いでいきましょう。そして、体力が回復してきたら散歩に出かけるなどして気分転換してみたらいいのではないでしょうか?

廃用性症候群にならないように、自分自身、また家族の協力も大切です。「年だからしょうがない」と諦めるのではなく、皆協力して寝たきりにならないようにしていきましょう。そして、以前と変わらない日常生活が送れるように前向きに考え頑張っていきましょう。
病気の解説A生活習慣病について
@高齢者の骨折  A生活習慣病
【喫煙】
タバコの煙にはニコチン、一酸化炭素、種々の発がん物質、線毛障害性物質、他種類の有害物質が含まれます。

喫煙には循環系、呼吸器系などに対する影響がみられます。肺がんをはじめとする種々のがん、虚血性心疾患、慢性気管支炎、肺気腫などの閉塞性肺疾患、胃、十二指腸潰瘍などの消化器疾患など様々な疾患になりえるリスクが非喫煙者に比べると、2〜10倍と高くなります。

また、妊婦が喫煙すると低体重児や、障害児が生まれる確立が極めて高くなります。それともう一つ、喫煙による集中力の低下で、交通事故を起こす危険性もおきてきます。
WHO推計値によると、日本でタバコが原因とされる死亡数は、1955年では3,600人(男性3,500人、女性100人)、1975年では44,300人(男性36,000人、女性8,300人)、1995年では95,000(男性76,000人、女性19,000人)です。
ここ20年で死亡数は約2倍に増加してきていますが、タバコによる病気は発症まで時間がかかることから、この増加傾向はまだまだ続いていくでしょう。
喫煙は自分の身体だけでなく、周りにいる非喫煙者にも害を与えてしまいます。マナーを守り、禁煙を目標にがんばって下さい。
【運動】

運動は身体(心臓、肺、筋肉)の機能を強化するほか、血圧を下げ、肥満を改善し、血糖を下げる効果があります。それに、善玉コレステロールを増やす効果もあり生活習慣病の予防、治療に活用されています。

運動不足は血液の循環を悪化させるだけではなく、余剰のエネルギーを蓄積させる為、肥満や動脈硬化を促します。また、骨や筋肉等の機能も低下させるので生活習慣病にかかりやすい体をつくってしまいます。

運動不足を解消するために、有酸素運動(楽に呼吸が出来き、筋肉に十分酸素が送り込める運動)を生活に取り入れるとよいとされます。 

ですが、重度な疾患(心臓病、腎臓病、肝臓病、関節障害)、不眠、二日酔いなどの体調不良の場合には運動をすることは逆に危険になってきます。また、糖尿病、高血圧、肥満などの重症の患者さんでも運動することによって、かえって逆効果になってきます。

その為、運動を実行する際は、運動を行うにあたって現在の病気の程度、自覚症状の有無を確認する必要があります。程度は、病気が軽症であり胸痛、動悸、息切れ、眩暈、失神、腰痛や関節痛がない事などがあげられますが、必ず医師に相談するようにして下さい。
 
◆ポイント

運動方法としてウォーキングについて少し紹介したいと思います。

@始めるにあたりすぐに運動するのではなく1〜2週間くらいかけ少しずつ身体を動かすようにしていきましょう。
A準備体操、整理体操は十分に行うようにしましょう。
B適当な靴、衣類を選びましょう。
C腹筋を引き締め、胸を張り、背筋を伸ばしましょう。
D歩幅は広めにとりつま先で地面を蹴るようにし着地は踵から着くようにしましょう。
E音楽を聴きながら、また、会話を楽しみながらリズミカルに歩行しましょう。
F最初は10分程度から始め、30分以上は行うようにしましょう。
G1日1万歩を目標にし、週2回以上は行いましょう。

以上の8項目に留意しながら運動を行ってみてください。

ウォーキングは現代人が無理なく生活に取り入れられる運動の一つです。運動は長い間続けて初めて効果が表れてきます。したがって、自分の出来る無理のない運動をしていきましょう。
【食生活】

日常における食事は生活習慣病予防の重要なカギを握っています。毎日摂る
食事は生活習慣そのもの。食事がかたよれば健康に悪影響を与えてしまいます。
毎日の食事で間食、偏食を避け、規則正しい食事を摂る事が大切ですが、そ
れには家族の協力も大切です。

◆ポイント
@1日30品目を目標にし炭水化物、蛋白質、ミネラル、ビタミンなど、バランスよく摂るようにしましょう。
A動物性脂肪より植物性脂肪を摂るようにし、肉類より魚類にしましょう。
B塩分は10g以下を目安にし、醤油、味噌、塩等の調味料の使いすぎに注意しましょう。
C糖分の摂りすぎには注意し1日50g以下を目安にしましょう。
D自分に合った適切なカロリーを摂るようにしましょう。
 (一人一人の体格、年齢、運動により必要なカロリーが変わってきます。)

1日に必要なカロリーは? 成人の場合では 1日のエネルギー量=標準体重×生活活動強度   
                  標準体重kg=身長m×身長m×22

生活活動強度  軽い  25〜30kcal  (デスクワーク中心の人。乳幼児のいない専業主婦等)
         中程度   30〜35kcal  (立ち仕事の多い人。教師、保母さんなど)
         やや重い 35〜40kcal  (建設、農業、漁業従事者など)
          重い   40kcal以上   (プロスポーツ選手など)

近年増加傾向にある生活習慣病は、高血圧症、糖尿病(インスリン非依存性)、動脈硬化(それに伴う心臓病、脳卒中)、癌が主なもので、肥満、高脂血症、高尿酸血症、慢性気管支炎、肺気腫、アルコール性肝障害、骨粗鬆症、歯周病、ドライアイ、腰痛、肩こりなどがあります。

これらの病気は、食生活、運動習慣、休養、喫煙、飲酒など、様々な日常生活と関わりがあり、平成8年12月より「成人病」から「生活習慣病」と呼ばれるようになりました。この生活習慣病は、成人病が中高年になってから注意すべきというイメージに対し、子供も含め、一生にわたって健康的な生活を心がけ、病気を予防すべきという意味が含まれています。

生活習慣病は40歳代ころより増加し始めます。しかし、本人の心がけで理想的な生活習慣を送ることにより危険度を大幅に減少させることができるのです。その理想的な生活習慣を送る為には、まず自分の身体を知る事が大切になります。

定期的な検診や、身近な病気に対する関心、知識を高めておく事で生活習慣病を未然に防ぐ事ができるからです。また、検診結果が正常、異常だけ見るのではなく、毎年の変化を比べ生活習慣を正していくことで予防につながってきます。それともう一つ、ストレスを貯めないように、適度な運動やスポーツ、趣味に興味を持つ事も大切です。